第一章 総則(第一条―第三条)
(目的)
第一条 この法律は、我が国の金融システムに対する内外の信頼を回復することが現下の喫緊の課題であることにかんがみ、金融機関等の不良債権の処理を速やかに進めるとともに、金融機関等の資本の増強に関する緊急措置の制度を設けること等により我が国の金融機能の早期健全化を図り、もって我が国の金融システムの再構築と我が国の経済の活性化に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「金融機関等」とは、次に掲げるものをいう。
一 預金保険法(昭和四十六年法律第三十四号)第二条第一項に規定する金融機関(以下「金融機関」という。)
二 農林中央金庫
三 農業協同組合法(昭和二十二年法律第百三十二号)第十条第一項第三号の事業を行う農業協同組合連合会(以下「農業協同組合連合会」という。)
四 水産業協同組合法(昭和二十三年法律第二百四十二号)第八十七条第一項第四号の事業を行う漁業協同組合連合会(以下「漁業協同組合連合会」という。)
五 預金保険法第二条第五項に規定する銀行持株会社等(以下「銀行持株会社等」という。)
2 この法律において「銀行」とは、銀行法(昭和五十六年法律第五十九号)第二条第一項に規定する銀行及び長期信用銀行法(昭和二十七年法律第百八十七号)第二条に規定する長期信用銀行をいう。
3 この法律において「自己資本の充実の状況に係る区分」とは、銀行法第十四条の二その他これに類する他の法令の規定に規定する基準を勘案して内閣府令で定める次に掲げる区分をいう。
一 健全な自己資本の状況にある旨の区分
二 過少資本の状況にある旨の区分
三 著しい過少資本の状況にある旨の区分
四 特に著しい過少資本の状況にある旨の区分
4 この法律において「株式等」とは、株式、劣後特約付社債その他これらに準ずるものとして主務省令で定めるものをいう。
5 この法律において「劣後特約付社債」とは、元利金の支払について劣後的内容を有する特約が付された社債であって、金融機関等の自己資本の充実に資するものとして主務省令で定める社債に該当するものをいう。
6 この法律において「劣後特約付金銭消費貸借」とは、元利金の支払について劣後的内容を有する特約が付された金銭の消費貸借であって、金融機関等の自己資本の充実に資するものとして主務省令で定める金銭の消費貸借に該当するものをいう。
7 この法律において「協定銀行」とは、預金保険機構(以下「機構」という。)が第十条第一項に規定する協定を締結した銀行をいう。
8 この法律において「子会社」とは、銀行法第二条第八項に規定する子会社又は同項の規定により子会社とみなされる会社をいう。
9 この法律において「特定協同組織金融機関」とは、次に掲げるものをいう。
一 信用金庫
二 信用協同組合
三 労働金庫
四 信用金庫連合会(全国を地区とするものを除く。)
五 中小企業等協同組合法(昭和二十四年法律第百八十一号)第九条の九第一項第一号の事業を行う協同組合連合会(全国を地区とするものを除く。)
六 労働金庫連合会(全国を地区とするものを除く。)
(金融機能の早期健全化のために講ずる施策の原則等)
第三条 内閣総理大臣が我が国の金融機能の早期健全化を図るためこの法律に基づいて講ずる施策は、次に掲げる原則によるものとする。
一 我が国の金融機能に著しい障害が生ずる事態を未然に防止すること。
二 金融機関等に対し、経営の状況を改善するよう自主的な努力を促すことにより、経営の合理化並びに経営責任及び株主責任の明確化を図ること。
三 金融機関等の再編を促進すること等により金融システムの効率化を図ること。
四 第一条の目的を達成するための社会経済的な費用が最小となるようにすること。
五 早期是正措置(銀行法第二十六条第一項の規定による命令(改善計画の提出を求めることを含む。)であって、銀行の自己資本の充実の状況によって必要があると認めるときにするものその他これに準ずる他の法令に基づく命令をいう。以下同じ。)と効果的な連携を確保すること。
六 情報等の適切かつ十分な開示を行うこと。
2 金融機関等は、内閣総理大臣がこの法律に基づいて施策を講ずる前提として、次に掲げる措置を行うことにより財務内容等の健全性を確保するものとする。
一 金融機能の再生のための緊急措置に関する法律(平成十年法律第百三十二号。以下「金融機能再生緊急措置法」という。)第六条第二項に規定する基準に従い内閣総理大臣(当該金融機関等が労働金庫又は労働金庫連合会である場合にあっては内閣総理大臣及び厚生労働大臣とし、当該金融機関等が農水産業協同組合連合会等(第二条第一項第二号から第四号までに掲げるものをいう。以下同じ。)である場合にあっては内閣総理大臣及び農林水産大臣とする。以下この項において同じ。)が定めるところにより、適切に資産の査定を行うこと。
二 内閣総理大臣が金融機関等の有する債権の貸倒れ等の実態を踏まえて定めるところにより、前号に規定する資産の査定の結果に基づき、適切に引当て等を行うこと。
三 内閣総理大臣が定めるところにより、その保有する有価証券その他の資産を適切に評価すること。
3 内閣総理大臣(当該金融機関等が労働金庫又は労働金庫連合会である場合にあっては内閣総理大臣及び厚生労働大臣とし、当該金融機関等が一の都道府県の区域の一部をその地区の全部とする農水産業協同組合連合会等である場合にあっては当該農水産業協同組合連合会等の監督に係る都道府県知事とし、当該金融機関等がその他の農水産業協同組合連合会等である場合にあっては内閣総理大臣及び農林水産大臣とする。第二十条において同じ。)は、銀行法その他これに類する法令の定めるところにより、特に著しい過少資本の状況にある旨の区分に該当する金融機関等に対して、当該金融機関等が自己資本の充実、大幅な業務の縮小、合併又は銀行業等の廃止等の措置のいずれかを選択した上当該選択に係る措置を実施することを命ずるものとする。