第五章 預金保険機構の業務の特例等(第三十五条―第四十七条)
(預金保険機構の業務の特例)
第三十五条 機構は、預金保険法第三十四条に規定する業務のほか、第一条の目的を達成するため、協定銀行と、金融機関等の自己資本の充実のための業務の委託に関する協定(以下「協定」という。)を締結し、及び当該協定を実施するための次の業務を行うことができる。
一 協定銀行に対し、第三十九条第一項の規定による貸付け又は債務の保証を行うこと。
二 協定銀行に対し、第四十条の規定による損失の補てんを行うこと。
三 第四十一条第二項の規定に基づき協定銀行から納付される金銭の収納を行うこと。
四 前三号の業務に附帯する業務を行うこと。
2 前項に規定する「金融機関等の自己資本の充実のための業務」とは、次に掲げる業務をいう。
一 第五条第一項の規定による決定に従い金融機関等(銀行持株会社等を除く。以下この号及び次号において同じ。)又は金融機関等を子会社とする銀行持株会社等が発行する株式等の引受けを行うこと。
二 第五条第一項の規定による決定に従い金融機関等に対する劣後特約付金銭消費貸借による貸付けを行うこと。
三 第十七条第一項の規定による決定(第十九条第一項の規定による承認を含む。次号及び次条において同じ。)に従い組織再編成金融機関等又は組織再編成銀行持株会社等が発行する株式等の引受けを行うこと。
四 第十七条第一項の規定による決定に従い組織再編成金融機関等に対する劣後特約付金銭消費貸借による貸付けを行うこと。
五 第二十八条第一項の規定による決定に従い信託受益権等の買取りを行うこと。
五の二 第三十四条の四第一項の規定による決定に従い協同組織中央金融機関等が発行する優先出資の引受けを行うこと。
五の三 第三十四条の四第一項の規定による決定に従い協同組織中央金融機関等に対する劣後特約付金銭消費貸借による貸付けを行うこと。
六 取得株式等(第十条第二項に規定する取得株式等、第二十条第二項に規定する取得株式等又は第三十四条の三第三項に規定する取得優先出資をいう。次条において同じ。)の譲渡その他の処分をすること。
七 取得貸付債権(第十条第一項に規定する取得貸付債権、第二十条第一項に規定する取得貸付債権又は第三十四条の三第三項に規定する取得貸付債権をいう。次条において同じ。)の譲渡その他の処分をすること。
八 第五号の規定による買取りにより取得した信託受益権等の譲渡その他の処分をすること。
九 前各号の業務に附帯する業務を行うこと。
(協定)
第三十六条 協定は、次に掲げる事項を含むものでなければならない。
一 協定銀行は、第五条第一項の規定による決定に従い株式等の引受け等を行うこと。
二 協定銀行は、第十七条第一項の規定による決定に従い株式等の引受け等を行うこと。
三 協定銀行は、第二十八条第一項の規定による決定に従い信託受益権等の買取りを行うこと。
三の二 協定銀行は、第三十四条の四第一項の規定による決定に従い優先出資の引受け等を行うこと。
四 協定銀行は、第三十九条第一項の規定による債務の保証の対象となる資金の借入れに関する契約の締結をしようとするときは、機構に対し、当該締結をしようとする契約の内容についての承認を申請し、その承認を受けること。
五 協定銀行は、第一号の規定による株式等の引受け等を行ったときは、速やかに、その内容を機構に報告すること。
六 協定銀行は、第二号の規定による株式等の引受け等を行ったときは、速やかに、その内容を機構に報告すること。
七 協定銀行は、第三号の規定による信託受益権等の買取りを行ったときは、速やかに、その内容を機構に報告すること。
七の二 協定銀行は、第三号の二の規定による優先出資の引受け等を行ったときは、速やかに、その内容を機構に報告すること。
八 協定銀行は、取得株式等についてこの法律の規定に基づく主務大臣の要請に従い株主又は出資者としての権利を行使すること。
九 協定銀行は、取得株式等について議決権その他の株主又は出資者としての権利を行使しようとするとき(前号の要請に従う場合を除く。)は、機構に対し、当該権利を行使することについての承認を申請し、その承認を受けること。
十 協定銀行は、第八号の要請に従い同号の権利を行使したとき又は前号の規定による承認を受けて同号の権利を行使したときは、速やかに、その内容を機構に報告すること。
十一 協定銀行は、取得株式等、取得貸付債権又は取得した信託受益権等について、できる限り早期に譲渡その他の処分をするよう努めること。
十二 協定銀行は、取得株式等、取得貸付債権又は取得した信託受益権等について譲渡その他の処分をしようとするときは、機構に対し、当該処分をすることについての承認を申請し、その承認を受けること。
十三 協定銀行は、前号の規定による承認を受けて同号の処分をしたときは、速やかに、その内容を機構に報告すること。
十四 協定銀行は、協定の定めによる業務に係る経理については、その他の経理と区分し、特別の勘定を設けて整理すること。
2 機構は、協定を締結したときは、直ちに、その協定の内容を内閣総理大臣及び財務大臣に報告しなければならない。
(協定銀行への機構からの通知等)
第三十七条 機構は、第五条第六項(第十七条第八項、第十九条第五項及び第二十八条第三項において準用する場合を含む。)又は第三十四条の四第四項の規定による通知を受けたときは、その旨を協定銀行に通知しなければならない。
2 機構は、協定銀行から前条第一項第五号から第七号の二までの規定による報告を受けたときは、直ちに、その報告の内容を主務大臣及び財務大臣に報告しなければならない。
(株式等に係る権利の行使等)
第三十八条 機構は、第三十六条第一項第九号又は第十二号の申請の承認をしようとするときは、主務大臣(同号の申請にあっては、主務大臣及び財務大臣)の承認を受けなければならない。
2 機構は、第三十六条第一項第十号又は第十三号の規定による報告を受けたときは、直ちに、その報告の内容を主務大臣(同号の規定による報告にあっては主務大臣及び財務大臣とし、当該報告が一の都道府県の区域の一部をその地区の全部とする農水産業協同組合連合会に係るものである場合にあっては当該農水産業協同組合連合会の監督を行う都道府県知事を含む。)に報告しなければならない。
(資金の貸付け及び債務の保証)
第三十九条 機構は、協定銀行から協定の定めによる株式等の引受け等又は信託受益権等の買取りのために必要とする資金その他の協定の定めによる業務の円滑な実施のために必要とする資金について、その資金の貸付け又は協定銀行によるその資金の借入れに係る債務の保証の申込みを受けた場合において、必要があると認めるときは、当該貸付け又は債務の保証を行うことができる。
2 機構は、前項の規定により協定銀行との間で同項の貸付け又は債務の保証に係る契約を締結したときは、直ちに、その契約の内容を内閣総理大臣及び財務大臣に報告しなければならない。
(損失の補てん)
第四十条 機構は、協定銀行に対し、協定の定めによる業務の実施により協定銀行に生じた損失の額として政令で定めるところにより計算した金額の範囲内において、当該損失の補てんを行うことができる。
(利益の納付及び収納)
第四十一条 機構は、協定において、協定銀行に協定の定めによる業務により生じた利益の額として政令で定めるところにより計算した額があるときは、毎事業年度、当該利益の額に相当する金額を機構に納付すべき旨を定めなければならない。
2 機構は、前項の規定に基づき協定銀行から納付される金銭を収納することができる。
(報告の徴求)
第四十二条 機構は、第三十五条第一項の規定による業務(以下「金融機能強化業務」という。)を行うため必要があるときは、協定銀行に対し、協定の実施又は財務の状況に関し報告を求めることができる。
(区分経理)
第四十三条 機構は、金融機能強化業務に係る経理については、その他の経理と区分し、特別の勘定(以下「金融機能強化勘定」という。)を設けて整理しなければならない。
(借入金及び預金保険機構債)
第四十四条 機構は、金融機能強化業務を行うため必要があると認めるときは、内閣総理大臣及び財務大臣の認可を受けて、金融機関等その他の者(日本銀行を除く。)から資金の借入れ(借換えを含む。次項及び次条において同じ。)をし、又は預金保険機構債(以下この条及び次条において「機構債」という。)の発行(機構債の借換えのための発行を含む。次項において同じ。)をすることができる。この場合において、機構は、機構債の債券を発行することができる。
2 機構は、前項に規定する資金の借入れ又は機構債の発行を行う場合における一時的な資金繰りのために必要があると認めるときは、内閣総理大臣及び財務大臣の認可を受けて、日本銀行から資金の借入れをすることができる。
3 第一項の規定による借入金の現在額、同項の規定により発行する機構債の元本に係る債務の現在額及び前項の規定による借入金の現在額の合計額は、政令で定める金額を超えることとなってはならない。
4 農林中央金庫は、農林中央金庫法(平成十三年法律第九十三号)第五十四条第三項の規定にかかわらず、機構に対し、同項の規定による農林水産大臣及び内閣総理大臣の認可を受けないで、第一項の資金の貸付けをすることができる。
5 日本銀行は、日本銀行法(平成九年法律第八十九号)第四十三条第一項の規定にかかわらず、機構に対し、第二項の資金の貸付けをすることができる。
6 第一項の規定により発行される機構債については、これを預金保険法第四十二条第一項の規定により発行される機構債とみなして、同条第五項から第九項までの規定を適用する。
(政府保証)
第四十五条 政府は、法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律(昭和二十一年法律第二十四号)第三条の規定にかかわらず、国会の議決を経た金額の範囲内において、機構の前条第一項若しくは第二項の借入れ又は同条第一項の機構債に係る債務の保証をすることができる。
(金融機能強化勘定の廃止)
第四十六条 機構は、金融機能強化業務の終了の日として政令で定める日において、金融機能強化勘定を廃止するものとする。
2 機構は、金融機能強化勘定の廃止の際、金融機能強化勘定に残余があるときは、当該残余の額を国庫に納付しなければならない。
(内閣府令・財務省令への委任)
第四十七条 この章に定めるもののほか、機構の金融機能強化業務の実施に関し必要な事項は、内閣府令・財務省令で定める。