第四章 金融整理管財人による管理(第八条―第二十六条)
(業務及び財産の管理を命ずる処分)
第八条 内閣総理大臣(この項に規定する処分に係る金融機関が労働金庫又は労働金庫連合会である場合にあっては、内閣総理大臣及び厚生労働大臣とする。第三項(次条第二項において準用する場合を含む。)、同条第一項、第十一条第二項から第四項まで、第十三条、第十四条第一項から第三項まで、第五項及び第六項、第十五条、第十九条第一項、第二十五条並びに第六十九条において同じ。)は、平成十三年三月三十一日までを限り、信用秩序の維持及び預金者等の保護を図るため、金融機関がその財産をもって債務を完済することができない場合その他金融機関がその業務若しくは財産の状況に照らし預金等の払戻しを停止するおそれがあると認める場合又は金融機関が預金等の払戻しを停止した場合であって、次に掲げる要件のいずれかに該当すると認めるときは、当該金融機関に対し、金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分(以下「管理を命ずる処分」という。)をすることができる。
一 当該金融機関の業務の運営が著しく不適切であること。
二 当該金融機関について、営業譲渡等(他の金融機関への営業若しくは事業の譲渡若しくは他の金融機関との合併又は他の金融機関若しくは銀行持株会社等に株式を取得されることによりその子会社となることをいう。以下同じ。)が行われることなく、その業務の全部の廃止又は解散が行われる場合には、当該金融機関が業務を行っている地域又は分野における資金の円滑な需給及び利用者の利便に大きな支障が生ずるおそれがあること。
2 前項に規定する「銀行持株会社等」とは、次に掲げる者をいう。
一 銀行法第二条第十一項に規定する銀行持株会社
二 株式を取得することにより銀行を子会社とする持株会社(銀行法第五十二条の二第一項に規定する銀行を子会社とする持株会社をいう。)となることについて同項の認可を受けた会社
三 長期信用銀行法第十六条の四第一項に規定する長期信用銀行持株会社
四 株式を取得することにより長期信用銀行を子会社とする持株会社(長期信用銀行法第十六条の二第一項に規定する長期信用銀行を子会社とする持株会社をいう。)となることについて同項の認可を受けた会社
3 内閣総理大臣は、第一項の規定により管理を命ずる処分をしたときは、主務省令で定めるところにより、これを公告しなければならない。
(管理を命ずる処分の取消し)
第九条 内閣総理大臣は、管理を命ずる処分について、その必要がなくなったと認めるときは、当該管理を命ずる処分を取り消さなければならない。
2 前条第三項の規定は、前項の場合について準用する。
(株主の名義書換の禁止)
第十条 被管理金融機関が銀行である場合において、内閣総理大臣は、必要があると認めるときは、株主の名義書換を禁止することができる。
(金融整理管財人の選任等)
第十一条 第八条第一項の規定による管理を命ずる処分があったときは、被管理金融機関を代表し、業務の執行並びに財産の管理及び処分を行う権利は、金融整理管財人に専属する。商法(明治三十二年法律第四十八号)第二百四十七条(信用金庫法(昭和二十六年法律第二百三十八号)第四十九条、中小企業等協同組合法(昭和二十四年法律第百八十一号)第五十四条及び労働金庫法(昭和二十八年法律第二百二十七号)第五十四条において準用する場合を含む。)、商法第二百八十条ノ十五(同法第二百十一条第三項において準用する場合を含む。)、第三百六十三条、第三百七十二条、第三百七十四条ノ十二(同法第三百七十四条ノ二十八第三項において準用する場合を含む。)、第三百八十条(同法第二百八十九条第四項、信用金庫法第五十二条第三項(同法第五十八条第五項において準用する場合を含む。)、中小企業等協同組合法第五十七条第三項(同法第五十七条の三第四項において準用する場合を含む。)及び労働金庫法第五十七条第三項(同法第六十二条第五項において準用する場合を含む。)において準用する場合を含む。)、商法第四百十五条(信用金庫法第六十一条、中小企業等協同組合法第六十六条及び労働金庫法第六十五条において準用する場合を含む。)及び商法第四百二十八条(信用金庫法第二十八条、中小企業等協同組合法第三十二条及び労働金庫法第二十八条において準用する場合を含む。)の規定による取締役及び執行役(被管理金融機関が信用金庫若しくは信用金庫連合会、信用協同組合若しくは中小企業等協同組合法第九条の九第一項第一号の事業を行う協同組合連合会(第十六条第一項において「信用協同組合連合会」という。)又は労働金庫若しくは労働金庫連合会(以下「信用金庫等」という。)である場合にあっては、理事)の権利についても、同様とする。
2 内閣総理大臣は、管理を命ずる処分と同時に、一人又は数人の金融整理管財人を選任しなければならない。この場合において、内閣総理大臣は、機構の意見を聴かなければならない。
3 内閣総理大臣は、必要があると認めるときは、前項の規定により金融整理管財人を選任した後においても、更に金融整理管財人を選任し、又は金融整理管財人が被管理金融機関の業務及び財産の管理を適切に行っていないと認めるときは、金融整理管財人を解任することができる。
4 内閣総理大臣は、第二項若しくは前項の規定により金融整理管財人を選任したとき又は同項の規定により金融整理管財人を解任したときは、主務省令で定めるところにより、被管理金融機関にその旨を通知するとともに、これを公告しなければならない。
5 会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)第六十九条、第七十条、第八十条並びに第八十一条第一項及び第五項の規定は金融整理管財人について、民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条第一項の規定は被管理金融機関について、それぞれ準用する。この場合において、会社更生法第六十九条第一項中「裁判所の許可」とあるのは「内閣総理大臣(当該金融整理管財人の管理に係る金融機関が労働金庫又は労働金庫連合会である場合にあつては、内閣総理大臣及び厚生労働大臣とする。以下同じ。)の承認」と、同法第七十条中「管財人代理」とあるのは「金融整理管財人代理」と、同条第二項中「裁判所の許可」とあるのは「内閣総理大臣の承認」と、同法第八十一条第一項中「裁判所」とあるのは「内閣総理大臣」と、同条第五項中「管財人代理」とあるのは「金融整理管財人代理」と、民法第四十四条第一項中「理事その他の代理人」とあるのは「金融整理管財人」と読み替えるものとする。
第十二条 法人は、金融整理管財人又は金融整理管財人代理となることができる。
2 機構は、預金保険法第三十四条に規定する業務及び第六十条に規定する業務のほか、金融整理管財人又は金融整理管財人代理となりその業務を行うことができる。
(金融整理管財人の報告義務)
第十三条 金融整理管財人は、就職の後遅滞なく、次に掲げる事項を調査し、内閣総理大臣に報告しなければならない。
一 被管理金融機関が管理を命ずる処分を受ける状況に至った経緯
二 被管理金融機関の業務及び財産の状況
三 被管理金融機関に係る営業譲渡等の見込み
四 前三号に掲げるもののほか、主務省令で定める事項
五 その他必要な事項
2 内閣総理大臣は、金融整理管財人に対し、前項の規定による調査及び報告に関し必要な措置を命ずることができる。
(業務及び財産の管理に関する計画の作成等)
第十四条 内閣総理大臣は、被管理金融機関に係る営業譲渡等のため必要があると認めるときは、金融整理管財人に対し、次に掲げる事項を含む被管理金融機関の業務及び財産の管理に関する計画の作成を命ずることができる。
一 被管理金融機関の資金の貸付けその他の業務の暫定的な維持継続に係る方針に関すること。
二 被管理金融機関の業務の整理及び合理化に関する方針その他被管理金融機関に係る営業譲渡等を円滑に行うための方策に関すること。
2 金融整理管財人は、前項の計画を作成したときは、内閣総理大臣の承認を得なければならない。
3 金融整理管財人は、やむを得ない事情が生じた場合には、内閣総理大臣の承認を得て、第一項の計画を変更し、又は廃止することができる。
4 金融整理管財人は、第二項の規定による承認又は前項の規定による変更の承認があったときは、遅滞なく、当該承認を得た第一項の計画又は前項の規定による変更後の計画(以下この条及び次条において「計画」という。)を実行に移さなければならない。
5 内閣総理大臣は、金融整理管財人に対し、計画の実行に関し必要な措置を命ずることができる。
6 内閣総理大臣は、必要があると認めるときは、金融整理管財人に対し、計画の変更又は廃止を命ずることができる。
(報告又は資料の提出)
第十五条 内閣総理大臣は、必要があると認めるときは、金融整理管財人に対し、被管理金融機関の業務及び財産の状況、計画の実施の状況等に関し報告又は資料の提出を求めることができる。
(金融整理管財人の調査等)
第十六条 金融整理管財人は、被管理金融機関の取締役及び監査役(被管理金融機関が株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律(昭和四十九年法律第二十二号。以下「商法特例法」という。)第一条の二第三項に規定する委員会等設置会社(以下「委員会等設置会社」という。)である場合にあっては取締役及び執行役、被管理金融機関が信用金庫等である場合にあっては理事及び監事)並びに支配人(被管理金融機関が信用協同組合若しくは信用協同組合連合会又は労働金庫若しくは労働金庫連合会である場合にあっては、参事。)その他の使用人並びにこれらの者であった者に対し、被管理金融機関の業務及び財産の状況(これらの者であった者については、その者が当該被管理金融機関の業務に従事していた期間内に知ることのできた事項に係るものに限る。)につき報告を求め、又は被管理金融機関の帳簿、書類その他の物件を検査することができる。
2 金融整理管財人は、その職務を行うため必要があるときは、官庁、公共団体その他の者に照会し、又は協力を求めることができる。
(金融整理管財人等の秘密保持義務)
第十七条 金融整理管財人及び金融整理管財人代理は、その職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。金融整理管財人又は金融整理管財人代理がその職を退いた後も、同様とする。
2 金融整理管財人又は金融整理管財人代理が法人であるときは、金融整理管財人又は金融整理管財人代理の職務に従事するその役員及び職員は、その職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その役員又は職員が金融整理管財人又は金融整理管財人代理の職務に従事しなくなった後においても、同様とする。
(被管理金融機関の経営者の破綻の責任を明確にするための措置)
第十八条 金融整理管財人は、被管理金融機関の取締役若しくは監査役(被管理金融機関が委員会等設置会社である場合にあっては取締役又は執行役、被管理金融機関が信用金庫等である場合にあっては理事又は監事)又はこれらの者であった者の職務上の義務違反に基づく民事上の責任を履行させるため、訴えの提起その他の必要な措置をとらなければならない。
2 金融整理管財人は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。
(金融整理管財人と被管理金融機関との取引)
第十九条 金融整理管財人は、自己又は第三者のために被管理金融機関と取引するときは、内閣総理大臣の承認を得なければならない。この場合においては、民法第百八条の規定は、適用しない。
2 前項の承認を得ないでした行為は、無効とする。ただし、善意の第三者に対抗することができない。
(会社整理に関する商法の規定の不適用)
第二十条 商法第三百八十一条第一項、第三百八十六条第一項(第六号から第九号までを除く。)及び第二項、第三百八十七条第一項、第三百八十八条から第三百九十一条まで、第三百九十七条並びに第三百九十八条(これらの規定を信用金庫法第六十二条、協同組合による金融事業に関する法律(昭和二十四年法律第百八十三号)第六条の二第四項及び労働金庫法第六十六条において準用する場合を含む。)の規定は、管理を命ずる処分があった場合における当該管理を命ずる処分に係る被管理金融機関については、適用しない。
(株主総会等の特別決議等に関する特例)
第二十一条 被管理金融機関における商法第二百十四条第一項、第二百四十五条第一項、第二百八十条ノ二第二項(同法第二百十一条第三項において準用する場合を含む。)、第三百四十六条若しくは第三百七十五条第一項の規定による決議、同法第三百四十三条、第三百四十五条第二項、第三百五十三条第五項(同法第三百六十五条第三項において準用する場合を含む。)、第四百五条若しくは第四百八条第四項に規定する決議、信用金庫法第四十八条、中小企業等協同組合法第五十三条若しくは労働金庫法第五十三条の規定による議決又は金融機関の合併及び転換に関する法律(昭和四十三年法律第八十六号)第七条第三項(第一号において準用する商法第四百八条第四項に係る部分に限る。)若しくは金融機関の合併及び転換に関する法律第七条第六項の規定による合併決議は、これらの規定にかかわらず、出席した株主又は会員、組合員若しくは代議員若しくは総代(以下「株主等」という。)の議決権の三分の二以上に当たる多数をもって、仮にすることができる。
2 被管理金融機関における商法第三百四十八条第一項、第三百五十三条第六項、第三百六十五条第二項若しくは第四百八条第五項の規定による決議又は金融機関の合併及び転換に関する法律第七条第三項(第一号において準用する商法第四百八条第五項に係る部分及び金融機関の合併及び転換に関する法律第七条第三項第二号に係る部分に限る。)の規定による合併決議若しくは同条第五項に規定する決議は、これらの規定にかかわらず、出席した株主の過半数であって出席した株主の議決権の三分の二以上に当たる多数をもって、仮にすることができる。
3 第一項の規定により仮にした決議、議決又は合併決議(以下「仮決議等」という。)があった場合においては、各株主等に対し、当該仮決議等の趣旨を通知し、当該仮決議等の日から一月以内に再度の株主総会又は総会若しくは総代会(以下「株主総会等」という。)を招集しなければならない。
4 前項の株主総会等において第一項に規定する多数をもって仮決議等を承認した場合には、当該承認のあった時に、当該仮決議等をした事項に係る決議、議決又は合併決議があったものとみなす。
5 前二項の規定は、第二項の規定により仮にした決議又は合併決議があった場合について準用する。この場合において、前項中「第一項に規定する多数」とあるのは、「第二項に規定する多数」と読み替えるものとする。
(株主総会等の特別決議等に代わる許可)
第二十二条 銀行である被管理金融機関がその財産をもって債務を完済することができない場合には、当該被管理金融機関は、商法第二百四十五条、第三百七十五条及び第四百五条の規定にかかわらず、裁判所の許可を得て、次に掲げる事項を行うことができる。
一 営業の全部又は重要な一部の譲渡
二 資本の減少
三 解散
2 信用金庫等である被管理金融機関がその財産をもって債務を完済することができない場合には、当該被管理金融機関は、信用金庫法第四十八条、中小企業等協同組合法第五十三条及び労働金庫法第五十三条の規定にかかわらず、裁判所の許可を得て、次に掲げる事項を行うことができる。
一 解散
二 事業の全部の譲渡
3 金融整理管財人は、商法第二百五十七条第一項及び第二百五十七条ノ三第一項(これらの規定を同法第二百八十条第一項において準用する場合を含む。)、商法特例法第二十一条の十三第六項、信用金庫法第三十八条第一項、中小企業等協同組合法第四十一条第一項並びに労働金庫法第四十一条第一項の規定にかかわらず、裁判所の許可を得て、被管理金融機関の取締役又は監査役(被管理金融機関が委員会等設置会社である場合にあっては取締役又は執行役、被管理金融機関が信用金庫等である場合にあっては理事又は監事)を解任することができる。
4 前三項に規定する許可(以下この条及び次条において「代替許可」という。)があったときは、当該代替許可に係る事項について株主総会等の決議又は議決があったものとみなす。
5 代替許可に係る事件は、当該被管理金融機関の本店又は主たる事務所の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。
6 非訟事件手続法(明治三十一年法律第十四号)第百三十三条ノ二第四項及び第五項の規定は、代替許可の申立てがあった場合について準用する。
7 代替許可の申立てに係る裁判に対しては、即時抗告をすることができる。この場合において、当該即時抗告が解散に係る代替許可の決定に対するものであるときは、執行停止の効力を有する。
8 前三項に規定するもののほか、代替許可に係る事件に関しては、非訟事件手続法第一編(第二条から第四条まで、第十五条及び第十六条を除く。)の規定を準用する。
(代替許可に係る登記の特例)
第二十三条 前条第一項第二号若しくは第三号若しくは第二項第一号に掲げる事項又は同条第三項に定める事項に係る代替許可があった場合においては、当該事項に係る登記の申請書には、当該代替許可の決定書の謄本又は抄本を添付しなければならない。
(債権者保護手続の特例)
第二十四条 銀行である被管理金融機関が資本減少の決議をした場合においては、預金者その他政令で定める債権者に対する商法第三百七十六条第一項の規定による催告は、することを要しない。
(管理の終了)
第二十五条 金融整理管財人は、管理を命ずる処分があった日から一年以内に、被管理金融機関の営業譲渡その他の方法により、その管理を終えるものとする。ただし、やむを得ない事情によりこの期限内にその管理を終えることができない場合には、内閣総理大臣の承認を得て、一年を限り、この期限を延長することができる。
(主務省令への委任)
第二十六条 この章の規定を実施するための手続その他その執行について必要な事項は、主務省令で定める。